2021/02/04 01:34
わたしは写真や動画の撮影をする仕事をしています。
主に釣りやアウトドアというコンテンツを撮影していて、人よりちょっと、全国各地の川や湖に訪れる機会が多いのですが、その傍ら「水中の魚の写真」を撮ることがあります。
撮った魚たちの中で気に入ったものを、こうしてウェブストアに並べて販売をしています。
写真を眺めると、撮影した日の情景や記憶が呼び起こされ、どれも思い入れがあるものばかりなのですが、その情景を皆さんにも紹介したいと思い立ち、この記事を書いてみることにしました。
◼︎この作品の主役「ニッコウイワナ」
この魚は「ニッコウイワナ」という名前の魚です。
日本でもっとも広い地域に生息しているイワナで、彼らは山あいの川や湖に住んでいます。
この写真を撮ったのは2019年8月、那珂川水系の源流。入山地点から4時間登山した先にある川へ、友人と釣りに行った時に出会ったイワナを撮影しました。
◼︎撮影した川までの道のり
十数kgある荷物を背負って、ゴロゴロ岩が転がる狭い林道を歩きます。
途中、ところどころ崖崩れの跡があったりします。
わたしは運動があまり得意じゃないし、高いところも大の苦手なので、ゆっくりゆっくり慎重に進みます。
◼︎たくさん歩いて、ようやく出会える景色
朝の4時を過ぎた頃に出発し、休み休み歩いて、ようやく目的地へ到着したのは9時〜10時頃。
目の前には鮮やかな青色の川。すぐ横の河原が今夜のテン場です。
目的地に到着。上流は水色が素晴らしく綺麗。
これは特別な加工やレタッチで色を鮮やかにしているわけでもなく、この川は本当に肉眼で見てもこんな色をしています。
束の間休息したあと、この川をさらに上流へと、釣りをしながら上っていきます。
この「ニッコウイワナ」はそこで撮影をしました。
商品化はしていないのですが、お気に入りの一枚。
8月とはいえ上流は水温がとても冷たく、手を数秒つけているだけでびりびりしてくるほどでしたが、もう夢中で撮りまくりました。
あまりに水の中が綺麗なもので、その美しさにすっかり頭がハイになり、水の冷たさもそれまでの疲労もどこかへ飛んでいってしまいます。
いつものことながら撮り終えたあとスイッチが切れると、急に猛烈な寒さが襲いかかってきて「早く焚き火にあたらないと命が...」
と、ぶるぶる震えながらテン場へと戻るのでした。
ご飯は自炊をして、夜は焚き火をして、テントで寝袋にくるまって眠ります。
そして翌朝早く起きて、また長い道のりを下山するのです。
ほんのわずかな時間、釣りをしたり撮影をしたりするために辛い思いをして山を登るのは、見る人によっては不思議なことかもしれません。
しかしこの至福の数時間を一度知ってしまうと、また苦労して足を運びたくなる、そういう時間がここには流れています。
◼︎作品について
わたしの販売している写真はよく「絵ですか?」と尋ねられます。
光沢感のある、いわゆる写真紙ではなく、マットな厚紙に印刷をしてあるので、写真っぽく見えないんだそうです。
それにこの写真は特にピントがパキパキに合っているわけでもないので、なおさら「絵っぽく」見えるのだと思います。
真っ青な水に泳ぐ、くっきりと鮮やかなオレンジ色のイワナのおなか。
作品の主役は「ニッコウイワナ」ですが、この「水」も主役と同じくらい、この作品にはなくてはならない被写体でした。
私は友人にこの川へ案内をしてもらったのですが、初めて訪れた時に、この水の色を撮ることができるならば何度でも訪れようと思いました。
釣りが好きな方、魚が好きな方や、なんとなくこの作品の雰囲気が好きでという方、これまでいろいろな方にこの写真をお迎えしていただきました。
これまでご購入くださった方、これから手にとってくださる方にも、日常の片隅に置いてちょっとだけ癒しになるような、そんな存在になれていたらいいなと思います。
▼Nikko Iwana 〈2L〉商品ページ
https://yukiharano.thebase.in/items/29645965